2010年01月28日

きのう、ひぐらし文庫さんで、、

雑司が谷では、お店とはイコールそこのお店の人である。
そこの人の思いと生き様がそのままお店の表情になる。

かつては、どこでも当たり前だったことが、今の東京には少なくなった。
あそこには、あの人がいるから行く、だからあそこでモノを買う。
そういう人と人との繋がりを前提とした、
「消費」やモノとの関わりが人とモノとを繋いでいることを、
私は、幼い頃を過ごした名古屋の下町で自然と身に付けてきたように思う。

ひぐらし文庫というお店が、最近、雑司が谷にできた。
間口が1間あるかどうかの、狭いお店だ。
格子になった入り口の硝子越しに中を覗くと、
カウンターらしき机の向こうに女性が座っている。
最初はちょっと入りにくい気がした。何と言っても入り口が狭い。
しかし、お店の中に入ると、ぱっと世界が開ける。
それはまるで、
神仙境への狭い入り口を抜けると別世界に通じるような感じだった。
たぶん、そう思えたのは、
あのカウンターに座っている店主の「世界」が、
この中にあるからなのだと、思う。
よーく見ると、
書棚には様々な本やモノが並ぶ。
その一つ一つから店主の思いがふんわりと立ち上る。

お店とは不思議な空間だ。
それは個人の家や部屋がその人の空気を纏っているように、
隠そうとしても隠せない空気感がそこに流れる。

私はカウンターに座り、フレッシュハーブティをたのむ。
透明のサーバーに緑のハーブがまるで水中花のように漾う。
濃厚な香りがやってきて、甘やかな味が舌を潤す。
生のハーブを使ったお店はそんなにはない。
そんなことから、この店主の女性とおずおずと話を始める。

話し出すと、ハーブの力もあってか、
カウンターが、まるでどこかの家の縁側のような感じになってくる。
ああ、そういえば、私の母のお店もこんな風に近所の人が、カウンターに座り
ピーナッツ付きの珈琲をすすりながら、午後の一時、話に興じていた。
店主の女性は、大きな書店に勤めていたこともあり、
さすがに本には詳しい。

そのうち、格子の入り口の向こうから中を覗いているカップルがいた。
「エビス・アート・ラボの〜〜」ですと、店主に話しかけている。
どうやら旧知の仲のようで、ひとしきり話が始まる。
「恵比寿」から、わざわざ雑司が谷の店に来る人もいるのかと、思っていると、
どうも、このカップルは名古屋の話をしている。
私は、思わず、「私、名古屋出身なんですよ」と、話に加わると、
実はこの二人は、私の生まれ故郷の街に住んでいると云う。

不思議なものだ。
東京でかれこれもう25年近くは住んでいるが、
故郷の街からの人に出会ったのは初めてのことだった。
歳をとればとるほど、故郷の街は懐かしくなる。

店主も最近名古屋の書店巡りをしたらしく、ひとしきり名古屋の話で盛り上がる。
「おそがい」の意味、判る?とか、名古屋と東京の違いなどなど、、。
このカップルは、ブックマーク・ナゴヤを運営していて、
そのPRで上京したようだった。
「円頓寺」と、なつかしい地名が出る。
空襲で焼け残った、円頓寺や明道町には古い家並みが遺り、商店街もある。

名古屋はイベントをするのに、田舎過ぎないし、
東京ほど大手資本や様々な思惑に振り回されることなく、
手作り感覚で出来るんではないと、皆が確かめ合う。

私の若い頃、「文化不毛の地」と、云われ続けた名古屋は、
今、こうして手作りで、人と人が繋がり会える空間を遺している。
短期的な投機や借金を軽蔑し、バブルに乗り遅れたりしたその街の堅実さが、
今は見直されているのだろうか。

ひぐらし文庫さんのおかげで、楽しいお茶の時間を過ごせた。
お店で誰かと出逢える、こんな豊かなことはない。

「旅猫さん」に行きたいという、名古屋からの客人を
夕やみの雑司が谷の路地を抜けて案内した。
名古屋には決してない曲がりくねった路地、、これが雑司が谷だ。
しかし、そんな風に違っていても、
私が、雑司が谷にこんなにも惹かれるのは、あの故郷の街
浄らかな心という名の、あの街に、
この雑司が谷がとても似ているからだったのだと、
家路で思うと、、、思わず、、、あついものがこみあげてきた。
歳はとりたくないものだ。


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往来座の瀬戸さんが「みたけちゃん」と名付けた、
雑司が谷御嶽坂の白鳥稲荷の前にいつも居るねこちゃん。
ちょっと恥ずかしがり屋さん。

「ひぐらし文庫」さんのブログ→
http://higurasibooks.blog.so-net.ne.jp/

「YEBISU ART LABO 」のHP→
http://www.artlabo.net/













posted by 星跡堂主人 at 14:22| 東京 ☀| Comment(0) | 雑司が谷の人とお店 Ami et magasin de Zoushigaya | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする