2011年01月30日

雑司ヶ谷霊園の冬 --梅、けやき、石仏をみつけに--


いまだ寒中の日々ですが、雑司ヶ谷霊園の梅はもう咲いています。
梢の高い梅を見上げると、冬の蒼天に花々が綺麗に散ります。

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こちらは毎年可憐な花を付け枝ぶりの良い、日本女子大創始者墓所の梅

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霊園の冬は、樹々と土のためか周囲の街よりも暖かです。
日差しのある午後は、ぽかぽかと小春の中にいるようで、
霊園散歩にはお奨めの季節です。
特に落葉樹が葉を落とすこの時期は、けやきの梢が美しく、
列柱のように幹が並ぶ風景は壮観です。

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霊園は江戸時代、将軍の御鷹場であったと云われていますが、
それは今の霊園のごく一部で、残りは農家でした。
農家の領域を分ける屋敷林のあとであることが、
このけやきの列柱からよく分かります。
樹々の葉が生い茂る季節には分からない、冬の霊園の醍醐味です。

向こうの方にかけてカーブしていきます。

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また、この季節は余分な草木も生えていないので、
霊園に点在する石仏を見るのにも適した季節です。
石仏の小さなものは、春や夏だと草木に埋まってしまうことがあるからです。

霊園を散策しながら私が調べた限りでは、
現在、雑司ヶ谷霊園には135基の石仏(多くは石仏墓標)が点在し、
その内の約50基が、銘などから江戸時代のものと推定されます。

中でも圧倒的に多いものは地蔵菩薩の106基(江戸期のもの32基)。
地蔵菩薩が多いのは、地獄から救済して下さる仏であったり、
三途の川で石を積み上げる亡き子の供養のためになるなどの、
江戸期から現在に至るまで連綿と続く親のこころの顕れだからであろうと思われます。

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無縁化したためか、フェンス際に3基まとめられているお地蔵さん。
宝永5(1708)年〜寛延2(1749)年のもの。





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こちらは、周囲にぐるりと六道地蔵が刻まれた「石幢」(せきどう)と云われるもの。
銘がないので正確には分かりませんが、江戸期のものと思われます。
それぞれの表情が素朴で愛らしく、こうしたお顔立ちは近代のものには少ないからです。


地蔵菩薩についで多いものは、観音菩薩で22基あります。
観音様は江戸期のものが多く、その内15基が江戸期のものと推定されます。
中でも如意輪観音は、その変化に富む造形から石仏の華といえるものです。

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こちらはその中でも古いもので、寛文9(1669)年銘の如意輪観音。
石仏は、江戸の初期ほど、おおらかでぽってりしています。
時代が下るほどに、写実的で細密になっていくのですが、
この観音様は古い時代の雰囲気をよく伝えています。


ほぼ同時期の如意輪様で、こちらは手に様々な宝器をもっていらっしゃいます。
光背に酢漿草と下り藤の家紋が刻まれて、
尾張藩家老で犬山城主だった成瀬家のものと推測されます。

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同じ如意輪観音ですが、とても愛らしいお顔立ちの仏さま。
こちらは明和7(1770)年銘です。

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先のお地蔵様と同じように無縁化したためか
フェンスの向こう側にいらっしゃる仏さま。
摩滅が酷く、観音様かお地蔵様か判然としませんが
銘は元禄10(1697)年と読めます。

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しかし、その摩滅したお顔がとても美しく、
私にはマリア様のようにも見えます。
「囚われのマリア」と、勝手にお呼びしています。
都電雑司ヶ谷駅のすぐ近くにいらっしゃいます。


ここにご紹介した仏さまはごく一部ですので、
また機会があれば。




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宝篋印塔の先の冬の空














posted by 星跡堂主人 at 19:50| 東京 ☁| Comment(0) | 雑司ヶ谷霊園 Cimetière de Zoushigaya | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年08月29日

雑司ヶ谷の夏  Été de Zoushigaya



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家々が壊され、無惨にもアスファルトで埋められた都電の駅周辺から
雑司ヶ谷霊園に一歩入ると、涼風が漾ってくる。
大きな樹々の葉が生い茂る緑陰の元に佇むと、東京の夏も良いものだとさえ思われてくる。


この時期花々は少ないが、百日紅はひと夏のあいだ、霊園のあちらこちらに咲いている。

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夾竹桃も紅い花を開く。
 
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これは、坂本龍馬の許嫁千葉さなの父、千葉定吉の墓所。
霊園の中央付近にある。





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木槿、韓国ではムグンファ(無窮の花)と呼ばれる。
八月の暑い盛り、天に向かっていくこの花をとても愛しく思う。




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こちらは、霊園の南、江戸期から鬼子母神への参詣の道だった御嶽坂に咲く芙蓉


この夏、霊園ではまた残念なことが起こった。
東京帝国大学哲学科の教授で、近代日本の思想芸術に強い影響を与えた、
ケーベル先生墓所の樹々が悉く伐採されてしまったことだ。

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裸になったケーベル先生墓所

経緯のいったんは、ケーベル会のブログに書かれているが、どうにも納得のいかない措置だ。
http://yasuraoka.cocolog-nifty.com/koeber/

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霊園を管理する東京都は、どういう事情でこのようなことをするのだろうか?
樹々に囲まれたこの墓所は、その雰囲気自体がケーベル先生の思想そのものだった。
文化も思想も何も理解しないものが、
霊園という、人のこころと深く関わる場所を管理しているとしか思えない。

生に隣接する死を、深く考えなければ、世界が暗澹たるものになりつつある現在、
私たちは、霊園という場所について、改めて問い直さなければならないと強く感じる。





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こちらは、日の出小の近くの空き地に咲いていた
白い夾竹桃

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夾竹桃にまつわる話を、最近あるブログで読んだ。→
http://www012.upp.so-net.ne.jp/nangou_yt/ookiessi.htm

大木実のことは、つい最近知った。→
http://pippo-t.jp/newpage36.html
戦中、戦後を通して日々の生活の中から、静かに詩を読んだ。
改めて、こうした生き方を思う。






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posted by 星跡堂主人 at 13:33| 東京 ☀| Comment(0) | 雑司ヶ谷霊園 Cimetière de Zoushigaya | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年08月16日

雑司ヶ谷霊園  撤去告知墓所リスト

雑司ヶ谷霊園で無縁墓所となり、
東京都によって撤去告知板が立てられていた墓所のリストです。
現在は、告知期間が終了し、
板はなくなり識別番号のついた柱だけが残り、
いつでも撤去される危機にさらされています。

霊園撤去告示墓所リスト #B67A65.pdf


以前にブログにアップした関連記事

http://zoushigaya.seesaa.net/article/133459949.html



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posted by 星跡堂主人 at 20:36| 東京 ☀| Comment(0) | 雑司ヶ谷霊園 Cimetière de Zoushigaya | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年04月18日

雑司ヶ谷霊園の春 すみれ Le printemps du cimetière de Zoushigaya 3

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すみれは、わずかな土の間に咲く、愛らしくちいさな花です。
雑司が谷に来て、路地の道ばたに、
ほんとうに小さく咲くその花のうつくしさを知りました。

また、それは、大都会東京の新宿と池袋に挟まれた、都会のちいさな路地、
雑司が谷という街そのもののようにも、思えました。


 側溝のすみれのはなや雑司ヶ谷    星跡堂

 すみれほどな小さき人にうまれたし  漱石


すみれを愛でるというこころもちは、
そのひとの生き方や存在そのものをも、変えていくように思えます。



霊園には、時折、朽ちた樹々の切られた後などのちいさな空き地があります。
そのちいさな空間は野草たちの楽園になります。

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ただ、それはほんとうにちいさな世界ですから、
屈んで地に臥せって見ないと分かりません。
もう少し寄ってみます。


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タチツボスミレに、左のたんぽぽに似た黄色い花はノゲシでしょうか。
見えにくいですが、右のちいさな花はアカネスミレかしらん。


土に寝っ転がって、そのちいさな世界の視線を感じると、
不思議なことに、逆に世界が広がり、み空が大きく感じられます。

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こちらは、白に紫の入る清楚なすみれ。
葉の形からニョイ(如意)スミレでしょうか。霊園に相応しいかもしれません。

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朽ちた樹木によりそって咲くナガバスミレ

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ほかの野草といっしょに咲いています。

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古い苔むした墓前に、きれいに並んで咲いてるツボスミレ。


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そして、
墓石の間からも逞しく咲いていました。

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2010年04月17日

雑司ヶ谷霊園の春 野の花ら Le printemps du cimetière de Zoushigaya 2

3月になると、毎年様々な野草が咲き始めます。
霊園は野草の宝庫なのですが、今年は例年になく遅く、
3月末になって漸く一斉に咲き始めてきた感じでした。
寒暖の差が大きかったことが影響したのでしょうか。


霊園だけでなく、雑司が谷では街のどこそこにも咲いている諸葛菜(花大根)。

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小さな小さな花のつめ草

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しかし、さらにちいさく小指の先ほどの花、
きゅうりぐさでしょうか?

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愛らしい姫へびいちご

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同じように鮮やかな黄色ですが、もう少し大きめのかたばみ

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あかむらさきのからすえんどう

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霊園ではやや少なめの菜の花、
100年前に亡くなった子どもの墓前に咲いていました。

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白く清楚な雪柳

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私は、よく馬酔木と間違えてしまうどうだん躑躅

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これからもっとたくさん咲いてくるほとけのざ

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おおいぬのふぐり

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江戸時代の小さなお墓の前に並んで咲いていました。

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野草の名前、識別は、
私には大変難しく、ご見識のある方のご教授を戴ければ幸いです。












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雑司ヶ谷霊園の春 初春 Le printemps du cimetière de Zoushigaya 1

今年の初春2月から4月にかけての雑司ヶ谷霊園の
樹々や花々のうつろいをまとめてみます。

最初は、まだ春あさい2月。
この頃は未だ、けやきなど落葉樹の並木の枝の線がそのまま出て、
それもまた美しい季節です。

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木立の並びが目に付くこの季節は、
かつて霊園になる前に、ここにあった農家の屋敷林の後と思われる、
けやきの並びがよく分かります。

この石畳も、霊園になる前からあったのでしょう。
その先の木立がまっすぐに並んでいます。

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ねこちゃんたちも、墓石の上で首をすくめてぬくんでいます。

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この頃は、松の緑が一際美しく感じられます。
霊園には、江戸幕府将軍の御鷹場にあったという松の巨木が遺っていますが、
その松と道路を挟んだ反対側にあるこの松も、横に延びた枝振りが優雅です。

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そのうちに、春を告げる花、福寿草が出てきました。

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薄黄色いこの花、毎年梅よりも早く咲き、霊園に春の色を添えます。
霊前に植えられることの多い梻(シキミ)という樹と思われます。

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かすかな香りをはこんで、冬の衣裳の木立の間で梅も咲き始めました。

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雑司ヶ谷霊園は、さくらはあまりありませんが、
梅は白梅も紅梅もよく見かけます。

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鮮やかな紅梅

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中でも趣のある老木のあるのが、日本女子大学創設者の成瀬仁蔵さんの墓所です。

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漸く光の春がやってきました。

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ねこちゃんたちも、ゆっくりと日向ぼこをしています。

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posted by 星跡堂主人 at 15:16| 東京 ☁| Comment(0) | 雑司ヶ谷霊園 Cimetière de Zoushigaya | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする